実に9年ぶりの開催となったMOFパティシエ ローラン・ル・ダニエル氏(フランス・ブルターニュ地方レンヌ)による講習会を行いました。
近年、見た目に洗練され、趣向の凝ったお菓子が多くみられるようになりましたが、その反面、お菓子作りの本質である美味しさへの探求が失われつつあり、そのような傾向はますます顕著に表れていると感じ、同氏は今一度原点に立ち返るべきではないかと考えました。原点とは何か。それは伝統的なルセットであり、フランス菓子における大切なベースとして後生に伝えていかなければならないもの。
そんな思いや技術を1人でも多くの方々に伝えたい、そういったコンセプトのもと開催させて頂きました。
始めにご紹介したのは、「パヴロヴァ」というメレンゲをベースにしたお菓子。近年、メレンゲ菓子は甘すぎるという理由から敬遠されていましたが、ここ最近、フランスでは「パヴロヴァ」を目にすることが増えたそうです。メレンゲの甘さを控え、クレームココ、コンポテドフリュイそしてシャンティフランボワーズとのバランスに優れた美味しいお菓子でした。
次は、「ティラミシュー」という、ティラミスとシューを現代的にアレンジしたもの。マスカルポーネは使用していませんが、しっかりとコーヒーでアンビベしたビスキュイとムースショコラブランの相性が抜群でティラミスを想像させる深い味わいになっており、そこに、オレンジペースト(マロンロワイヤル)を使用したクレームムースリーヌを絞ったシューを飾り、味・見た目ともに斬新な作品となりました。独創性豊かにアレンジされたティラミスは、参加者の皆様から好評価頂いた作品の1つでした。
次いでご紹介をしたのは、「ババショコ」。ババ生地は、絞っている間に生地温度が上がり発酵が始まってしまう為、温度を高くせず作る必要があります。フランスの一部の工場では、カードルに流して冷凍し、ウォーターカッターで切るなどして、大量生産されるようになっているというお話がありましたが、作業効率が悪い為、ババの製造を止めていく傾向にあります。これにより、伝統製法が忘れ去られていくことに危機感を感じ、1人でも多くの方々に語り継ぎたいという思いから、講習会の作品の1つに選んだそうです。実際に、ローラン・ル・ダニエル氏のお店では、生地のテクスチャーを調整してシリコン型等に絞れるように工夫して、手間を惜しまず作られたババを提供されているそうです。
次いで、「トロンプルイユ(フランス語で“だまし絵”という意味)」。ハンバーガーをリアルに表現した、ローラン・ル・ダニエル氏のユーモアと繊細な技術が融合した逸品でした。バンズはマカロン、パテはムースショコラ、チーズやトマトはマンゴーや苺のジュレで表現。ジュレは、ゼラチンの添加を抑え、でんぷんを併用し食感と保形成の良さを実現。かつフルーツピューレの味・色、テクスチャーに影響がでない程度に火入れを行なっており、ナチュラルで鮮やかな色合いと口どけの良さが印象的でした。
最後は、ブルターニュの伝統菓子で、マロンロワイヤルのパートドマロン セミコンフィ(今秋発売予定)を使用した「ガトーブルトン・オ・マロン」でした。美味しさはさることながら、水分が少ない配合により約2か月間の日持ちが可能な為、メニューに組み込みたいというお客様が多数いらっしゃいました。
伝統的ルセットに基づいた現代のお菓子をテーマに提案をさせて頂きましたが、ローラン・ル・ダニエル氏の経営者としての考えも交えた貴重なお話もあり、様々な観点から講習会をお楽しみいただけたのではないかと思います。
講師:ローラン・ル・ダニエル氏
日程:2018年5月30(水)、31日(木)
場所:ドーバー洋酒貿易株式会社